湧水めだか公園（大分県津久見市）
Medaka Park in Tsukumi City
市の区画事業によって「めだか」の生息していた小川が埋め立てられることを知った千怒小学校の児童らは、校庭にめだか水槽を自ら作り、また地域住民の協力を得て別の生息場所を確保するなど、めだか保護の継続的な取り組みを行っていた。1999年より始まったこの児童と住民達のめだか保護活動は、市長そして市のまちづくり計画を動かし、めだかの棲める水路を併せ持った公園整備事業に結実する。
まちづくり交付金を活用した本整備事業では、公園の設計から完成までの過程で児童と住民（大人）が世代を超えて話し合うワークショップ（WS）が全6回開催された。施工時の園内の芝張りは千怒小学校の生徒達自らで行い、公園の竣工式には十年前、保護活動に携わっていた、かつての小学生も集い、めだかの放流が行われた。
地域住民同士の関係性の希薄化が問われる今日、湧水めだか公園完成までの一連のプロセスは、10年間に及ぶめだか保護の「活動」が公園として実際の「形」に結実するという、地域コミュニティ共同の達成感をもたらした。安易な施設整備による生態系への悪影響が問題視されるなか、本公園は小規模ながらも人と生物との共存を目指した継続の力が、市のまちづくり計画を動かした貴重なデザイン事例といえる。また地道な住民活動から始まり、環境保護の視点からまちのインフラ整備が行われた道筋も示唆的といえる。
本広場のデザインでは、近隣より湧き出る天然水を園内に設けた丘に引き込み、公園内をゆっくりと流れる曲線的な めだか水路が提案されている。また丘の一部には湧水に親しむことのできる水遊び場を設置し、小さな子供でも安心して遊べる空間が提供された。さらにそうした園内や地元特産品のミカンを栽培している里山が一望できる休憩場所が設けられ、利用者の視線と見通しの良さによって周囲の風土、景観を魅力として取り込む公園のデザインが目指された。
完成式典の様子は県内の全テレビ局、新聞等が取り上げ、めだか観察や湧水遊びを契機とする親子のコミュニケーション、さらに地域の継続した保護活動が現実の公園の形に実を結んだものとして広く報じられることとなった。
受賞歴：2010年度 キッズデザイン賞(フューチャープロダクツ部門)、土木学会第6回景観･デザイン研究発表会 優秀ポスター賞、2012年度日本造園学会造園作品選集（設計部門）掲載
