昭和橋架け替え事業・「たたら製鉄」によるサインづくり (岩手県住田町)
Showa Bridge and Tatara Steelmaking in Sumita Town










岩手県東南部に位置する住田町は人口4,742人(令和6年3月末時点)、面積334.83平方キロメートルのうち山林面積が73.1%と、四方を山に囲まれた自然豊かなまちである。住田町は江戸期から内陸と沿岸を結ぶ交通の要衡として発展、中でも主要な宿駅として賑わった世田米地区は、現在も土蔵が建ち並び当時の繁栄を物語っている。特に明治30年代後半の伝統的な町屋と土蔵群が当時の姿のまま残されていた旧菅野家住宅は保存改修され、2016年に住民交流拠点施設「まちや世田米駅」としてオープンし、町のみならず周辺地域から多くの人々が訪れている。当研究室柴田は、町内を流れる気仙川に架かる昭和橋の架け替え計画をきっかけに、本計画の景観検討委員会委員長を務め、現在も施工に関わる指導助言に従事している。また東日本大震災以降、精力的な復興支援活動を続けている邑サポートと連携し、町内のまちづくり支援活動にも携わってきた。
2017年には上記世田米地区の町並みや史跡の魅力をより知ってもらうために案内サインの必要性が挙げられ、「住田町の素材、技術を使って自分たちでサインをつくる」との方針が決定、板面は町産の木材を、支柱は大正時代まで繁栄した栗木鉄山にちなんで鉄製で、ベースは町産石材で製作することとなった。
明治から大正にかけて稼働していた「栗木鉄山跡」は、2021年に国指定史跡に指定され、最盛時には国内4位の銑鉄生産量、従業員五百数十人と一大製鉄村を築いていた場所として知られる。これまでも住田町ではこの歴史と資産を活かし、地元で採れる鉄鉱石や砂鉄を用いた「たたら製鉄」体験を続けており、地元小学校でも授業の一環として平成23年から毎年開催されてきた。
上記のサインづくりでは、ナグモデザイン監修のもと、盤面の木材はもとより、支柱の鉄についても自分たちで製鉄を行い、オール住田町産のサインを実現した。またこれらのプロセスは地元住民やボランティアガイドとワークショップを行いながら意見を集約している。
なお2025年度からは、栗木鉄山跡地の保存活用に関する計画策定委員会が発足し、当研究室柴田は本委員会委員として議論・計画検討に従事している。
受賞歴:グッドデザイン賞2018
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