さいき城山桜ホール・大手前地区(大分県佐伯市)

さいき城山桜ホール・大手前地区(大分県佐伯市)
Saiki Shiroyama Sakura Hall in Saiki City and Otemae District

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 かつての城下町や商店街の活気が失われていた街の中心部に位置する大手前地区に、⽂化施設を中心として、地区全体の整備を行い賑わいを取り戻すことで、市内回遊動線を有効化し、まち全体の活性化を図るプロジェクトである。周辺との調和、市民の居場所の確保、活動が見えることで活性化を図る等の工夫を施し、地区全体の賑わい創出を図った。

 大手前地区は、佐伯藩の城下町としての歴史があり、文化の中心地として栄えてきた。昭和に入ってからも壽屋(九州最大手スーパー)の発祥の地として、市内で最も賑わうエリアであった。その後、郊外型商業施設の進出によって壽屋が2002年に閉店、商店街の大規模な火災の発生により人の流れも無くなり、長く空き地のまま臨時の駐車場と化していた。そのため、市が敷地を取得し、2010 年に大手前開発基本構想を策定、同地区の振興を目指す拠点施設の計画が開始された。しかし、地権者以外の市民に十分な説明が無いまま、施設規模が当初の4 階から13 階に変更される事態を招き、市民の反発が相次いだことから、2012年、市長は事業の白紙撤回を表明した。

 こうした経緯を踏まえ、市は大手前地区の再起をかけ、プロジェクト全体の統括役として当研究室の柴田に要請、徹底かつ多様な市民参加のプログラムを導入し、周辺まち並みとの景観的調和や地区内の既存商店街、周辺エリアとの繋がり、活性化を目的とした整備計画の実施を目指した。道路形状を変更提案して街区のまとまりを生み出し、歩行者の安全性だけでなく、地区全体を活用したイベントの開催を促した。バスターミナルの再編と一体的な道路舗装等の総合的な計画とともに、2つの広場および歩行者空間に人の居場所を効果的に配置することで、市民が日常的に憩える風景をつくり出した。

 桜ホールやバスシェルター等の建物には、分節した屋根・壁面が採用され、周辺の古い町並みや寺社のある景観との調和が図られた。桜ホールは通りに賑わい感が表出するようにガラス張りとし、北側サッシをフルオープンとすることで、屋内外が有機的につながり、周辺商店街と連携したイベントの開催なども可能な拠点地区となった。

 本プロジェクトは、実施設計段階において株式会社久米設計、株式会社スタジオテラが携わり、基本計画においても株式会社ワークヴィジョンズ、ナグモデザイン事務所、大分大学建築・都市計画研究室他、市民会議を含め、多くの方々との協同・協力によって達成されたものである。

受賞歴:土木学会デザイン賞2023グッドデザイン賞2022都市景観大賞「都市空間部門」2021

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