福岡県営西公園ドッグラン(福岡県福岡市)

福岡県営西公園ドッグラン(福岡県福岡市)
Nishi Park Dog Run

スクロールできます

 
 日本さくら名所100選に入る福岡県営西公園では、園内全体の魅力アップと利用者の増加を目指し、2021年9月に「西公園再整備基本計画」が策定された。また福岡県は、近年、医学と獣医学の連携によって世界的に広まりつつある「ワンヘルス(One Health)」の理念に取り組む先進県としても知られる。ワンヘルスとは、自然破壊や動物由来感染症リスクの抑制を図るため、人と動物の健康、環境の健全性を一つの健康と捉え、一体的に守っていくという考え方である。こうした背景を踏まえ、福岡県は上記基本計画に基づく再整備事業の一環として、西公園内にドッグランを整備し、2023年10月に供用を開始した。

 自然石の擁壁やスロープ、階段工等の土木デザインを投入し、園内の低利用だった窪地がドッグランに再生された。ベンチや外灯等の付属物のデザインにも注力し、愛犬と飼い主両方の快適な居場所となっている。

 窪地状である対象地は上方を通る園路から見下ろせる位置にあるが、以前は周囲の木々が繁茂しており、日中から薄暗い場所であった。園路からのアクセスも悪く、立ち入って休憩する利用者等はほぼ皆無であった。整備後は園路からドッグラン北側に直接アクセスできるよう、斜面地に自然石を組み込んだ階段工を設置し、ドッグラン全体を眺望できる良好な視点場としても機能している。

 豊かな自然に包まれた西公園ドッグランは自由に走り回る犬は勿論、多くの飼い主が交流を深め、犬と人の心の健康づくりに貢献している。従来のドッグランはフェンスに囲まれた平地に簡易ベンチという施設が多く、ワンヘルスの理念を念頭に小さいながらも土木デザインの投入によって、犬と人の快適な共存空間が創り出されたことは貴重な事例といえる。

目次