うみんぐ大島(福岡県宗像市)
Uming Oshima in Munakata City








大島は宗像市神湊の沖合11kmに位置し、周囲 14 k m、面積 7.45 k㎡、人口 823 人、福岡県で最も土地面積の広い離島である。島内人口は年々減少傾向にあるものの、民宿等の宿泊施設も点在しており、夏場にはキャンプや海水浴、釣りを目的とした観光客が多い。宗像市は平成17年から10年間の方針「第一次宗像市総合計画」を提示し、その一環として離島・沿岸地域の振興を目指す地域再生計画「離島の素材を活かした癒しの島づくり計画」を福岡県と共に策定した。平成18年12月には離島地域の活性化を目的とした「宗像市元気な島づくり計画」を策定し、これに基づき県の事業として、島の既存防波堤の外海側に水産資源を活かした海洋体験施設が整備されることとなった。
「うみんぐ大島」は福岡県宗像市大島の離島振興を目指す地域再生計画の一環として整備され、全国でも珍しい釣り機能を持つ防波堤、浮桟橋、さらにこれに繋がる海上遊歩道、トイレなどがデザインされている。大島に広がる透明な海とその景観、豊富な魚介類に恵まれた自然環境を生かし、釣り体験やシーカヤック、海中や磯の観察、魚さばき教室等、家族連れのレジャーや小中高校など幅広い年代の環境教育の場として利用されている。計画当初の原案では配慮されていなかった海への眺めと後背地の地形を考慮し、施設の全てが景観設計と構造物自体のデザイン検討によって提案されている。
当初、遊歩道横の浜辺はコンクリート製の段差が大部分を占める予定であったが、最終案では天然の磯場と浜辺をできる限り残し、周辺で採取された自然石によって緩やかな傾斜を設ける案に変更された。また施工途中、堤防施工時の仮設埋め立て道路を利用した歩道設置案が浮上し、磯場の大部分が消失する可能性があったのに対して、背後の地形を考慮した曲線的な海上歩道橋の線形案によってこれを回避、磯場の環境が守られた。
離島振興等を目指す施設計画において、単に観光活動のできるハード整備という観点でなく、本来、島が持つ景観の美しさや自然環境の豊かさに配慮したデザインの大切さを体現したプロジェクトである。ゴツゴツとした印象や圧迫感が懸念される海洋土木構造物の存在を、デザインの工夫によって楽しさと憩いのある、愛される場所にしていく不断の努力が今後も必要であろう。
受賞歴:グッドデザイン賞2011
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