小値賀町サイン計画およびデザイン(長崎県小値賀町)
Ojika Town Sign Plan and Design and Design









長崎県北松浦郡小値賀町は九州の西方沖の五島列島北部に位置し、最も人口の多い笛吹地区がある小値賀島を中心として、周囲に大小17の島が散在している。そのうち集落がある島は、小値賀本島、斑島、黒島、大島、納島、六島の6つであり、本島は火山の噴出によって形成された火山群島である。その雄大で美しい独特の景観と海岸美から、全島が西海国立公園に指定されており、「日本で最も美しい村」にも選ばれている。また古民家再生やグリーンツーリズムの先進地として知られる長崎県小値賀町は、屋外広告物の老朽化とその無秩序な掲出による景観への悪影響を懸念し、 2014年度より島内の誘導サインを本格的に見直す作業を進めるため、当研究室は本サインの設置計画およびサイン形状の詳細な設計に取り組んだ。
2014年度~2016年度にかけて小値賀町の中心地域である小値賀島、斑島を対象範囲とし、地元住民の参加による全5回のワークショップ(WS)を実施し、サイン設置箇所の選定から具体的なデザイン案の考案にいたる全作業を遂行した。WSはサイン計画の事務局である小値賀町役場建設課と当研究室ならびに住民の三者によって構成された。
小値賀町の景観との調和を図るためにサインの材質は自然素材である木材を使用し、そのスギ材に古民家の色をモチーフとした黒褐色の塗装と白の印字を施した。記載する文字ならびにサイン自体の大きさについては、島を回遊する際に貸出自転車を利用する観光客が多いことから、車の利用者からの視点だけでなく、自転車の利用者目線にも配慮している。観光客に島をのんびり回遊してもらうために「サインに近づき立ち止まってもらう」というスローペースの観光行動を促す意図が含まれている。
表面のデザインについては住民が小値賀町を容易に案内できるよう、集落を示す地区名をサインの最上部に記載し、地区名と目的地となる地名の間を区切るために海の水平線をモチーフとした3本のラインを取り入れた。加えて地区名の文字の大きさを地名と比較してやや小振りにすることで、両者の差別化を図っている。さらに視認性と共に統一感を持たせたデザインとするために、矢印ならびに地名、距離表示といった情報を規則的に配置した。
今回デザインされた誘導サインは、住民発案によって地区名が記載されることとなった。これは観光客のみならず、道案内時に説明しやすいという住民の目線に立ったサインの利用が想定されている。観光客と住民とのサインを介したコミュニケーションによって島内の地区認識が深まり、より記憶に残る小値賀の観光行動を促進させることを願っている。
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