福岡大学病院デイケア棟前広場「はたケア」(福岡県福岡市)
Fukuoka University Hospital Daycare Open Space “Hata Care”











福岡大学病院精神科デイケア棟は、日帰りリハビリテーション施設であり、メンバー(デイケアの患者さんのこと)の社会生活機能の回復を念頭に治療が行われている。デイケアは治療だけでなく日常的な居場所として対人関係技術の訓練や心の安定といった役割も担っている。 またデイケア創設時の1974年から続く園芸療法として、「アグリ活動」というデイケア棟前での畑作業が行われており、メンバーやデイケア職員に親しまれてきた。園芸療法とは、植物そのものや植物の生長過程に関わる園芸活動などを通して、身体的・精神的・社会的・教育的により良い状態に導き生活の質向上を目指す療法と考えられている。デイケアでのアグリ活動は季節を問わず行われ、毎週参加することで就労等に必要な忍耐力の向上に貢献しているとされ、アグリ活動の一環として近くの保育園児を招いた芋ほり大会などのイベントも行われている。
広場整備について
デイケアメンバーの若年化に伴い、上述した「アグリ活動」への消極的姿勢が懸念され、また畑の周囲には遊休地となった雑草地が広がっていた。遊休地の中央部には約15mのカエデの木がシンボルとして存在し、整備前から隣接したベンチが設置されていたものの損傷が激しいこと、その他にも段差やフェンスによって敷地が二分され、畑への見通しやアクセスの悪さが問題となっていた。加えて雑草地全体の水はけの悪さもあり、畑作業や保育園児を招いた芋ほり大会以外は、ほとんど人が立ち入らない空間であった。
そこで2020年6月に福岡大学病院は当研究室への設計依頼とともに、それら雑草地と畑に加え、病院関係者用の駐車場、通路、ベンチなどを配した広場整備を行った。当研究室の提案によって、元々あった敷地を二分するフェンスが除去され、段差をなくし芝生の張られた緩やかな傾斜とS字を描く曲線的通路が設置された。これにより遊休地内の一体性と開放感が高まり、利用しやすい広場にリニューアルされた。
整備後のデイケア職員へのアンケートでは、畑で行う園芸療法への参加頻度の増加や積極的な参加に繋がっているとの意見をいただいた。またメンバーからは「大きな木が映えるようになった」「季節の変化や自然が楽しめる」「大きな木陰や緑に囲まれた空間でリラックスできる」といった木や季節等の自然に関する意見や、「ベンチで時間を過ごしやすい」「休む場が増えた」「ひとりになれる場所があり安心感ができた」「アグリ活動で社会のつながりを感じられる」等の意見が得られた。
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